坊主頭にしたら迷うこと。
そのひとつにファッションが挙げられるだろう。
あまりに馴染みがない髪型のため、坊主に合わせた特別な服が必要な気がしてきてしまうのだ。
かくいう私もそのひとりだ。
坊主にした当初は何を着ても違和感があった。今までの服は「なにか違う」ような気がしてしまっていた。では坊主に合わせて選んだ新しい服なら似合うのかというとそうでもなく、やはり違和感があった。
しかし坊主歴10年のなかで気づいた。
似合う服装というのは髪型やルックスなどの外見との相性ではなく、心やキャラクターという内面との相性ということだ。
その最たる例が大学デビューで金髪にネックレスをした内気な若者だろう。
イケてる男になろうとする心意気はいいが、あまりに本人のキャラクターとかけ離れているため違和感が拭えないのだ。
スケーターファッションが最も似合うのはスケーターだ。大工の服装が最も似合うのは大工だ。
それは髪型でも同じ。坊主歴が浅いうちはまだ心という内面と坊主頭という外面の整合性が取れておらず、いつもの服が似合わないという感覚につながる。そのアンバランスさは他人に伝わる。
つまり坊主のファッションで大切なのは「自分が坊主であると真に受け入れることができるかどうか」だ。
坊主だからと特別な服はいらない。
坊主の自分を認めて受け入れ、いつもの服を着てればいい。
坊主ならラッパースタイルが似合うのか?
「坊主なら〇〇のファッションが似合う!」
という記事を見かけるが、それはあまりに短絡的だと思う。
たとえば坊主に似合うファッションでイメージするのはダボダボだったりイカつめだったり、いわゆるラッパーのようなギラギラしたスタイルが真っ先に思いつく。
しかし坊主なら全員、ギラギラしたスタイルが似合うのだろうか?
私はそうは思わない。
ヒップホップカルチャーに精通している坊主なら似合うだろう。そういうマインドを持っているからだ。
では穏やかな性格でフォークソングが好きな坊主だったらどうだ。毎朝エプロンを巻いて卵焼きとみそ汁を作り、朝いちばんの掃除は欠かさない。
そんな「ていねいな暮らし」を心から楽しんでいる坊主の男性を想像してみてほしい。
本当にギラギラとしたファッションが似合うだろうか。
ダボダボの服に金色のゴツいチェーンネックレスが似合うだろうか。
むしろお笑い芸人のシソンヌじろうさんのようにセントジェームスのウェッソンのようなボーダーTシャツが似合いそうじゃないか?
顔のパーツによる似合う似合わないもあるだろうが、より影響が大きいのは外見より内面だと考える。
個性的な自分を演じるための坊主は何を着ても似合わない
もちろん「俺はこういう性格だ」と断言できるほど白黒ハッキリした人間はいない。ていねいな暮らしをしながらもオラオラのフリースタイルラップが好きな人もいる。
それが個性だ。
坊主なら〇〇ファッションが似合う
坊主なら〇〇色が似合う
坊主とファッションを語る上で、そんな短絡的な話はないと強く思う。
稀代のファッションデザイナー、マルジェラはこう言っている。
僕の洋服を着る人は自分を個性的に見せたい人だ。本当に個性的な人は「GAP」なんかを着てるんじゃないか
外見だけで表現する個性ほど陳腐でチープなものはない。
個性的に見せたいだけ、奇をてらいたいだけで坊主なら、きっと何を着ても似合わない。
坊主のマインドを育てるには
坊主ファッションには「坊主にしたいからしている」「坊主である自分を受け入れている」というマインドが大切だ。
ルックスやスタイルを否定するわけではないが、やはり本人のキャラクターを無視したファッションは違和感が生まれる。
ではどのように坊主マインドを育てればいいのか。
特別なことはいらない。
ただ坊主で暮らすことだ。
坊主にして初めての外出でドキドキしてみる。ドライヤーいらずの便利さに驚いてみる。ジョリジョリとした触り心地に慣れてみる。夏の日差しの強さに困ってみる。
そうやって坊主として過ごしているといつの間にか当初の不安が消え去り、坊主であるということが当たり前になっていることにふと気づく。
真っ白なスニーカーをおろすときと同じだ。最初はきれいすぎて、白すぎて恥ずかしさすら覚えるが、履き込んで汚して洗ってを繰り返しているといつの間にか馴染んでいる。
すっかり履き込んだ頃には、坊主にする前と同じ気持ちでいつもの服を着れるようになっているはずだ。
おすすめのファッション本
とはいえマインドが大事というだけでは指針がなさすぎて迷子になるかもしれない。「坊主にする前からいつもの服がダサくて困っている」という人もいるだろう。
だから一冊、メンズファッションの本を推薦しておく。
小手先の技術ではない、ファッションの根幹に触れた本だと思う。